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障害者を否定し,消し去ろうとする考え持っているのは本当に相模原障害者施設殺傷事件の容疑者だけなのか?」脳性マヒのため,生まれたときから思い通り体を動かすことができない渋谷治己さんの問いかけ NHK首都圏ネットワーク

相模原 障害者 差別 抵抗 テレビ ドキュメンタリー,情報番組,ニュース等

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1月12日(木)

障害者はいない方がいいのか?

 

 (映像:「障害者施設殺傷事件」現場)

相模原市知的障害者施設で起きた殺傷事件から5ヶ月あまり.

(映像:公聴会

おととい,施設の建て替えについての公聴会が開かれました.会場に一人の障害のある男性の姿がありました.事件の直接の当事者ではありませんが,なぜ事件が起きたのか,わが事のように考え続けています.

(字幕〝障害者を否定〟私たちの中にも---)

障害者を否定し,消し去ろうとする考え持っているのは本当に容疑者だけなのか.私たちに向け問いかけています.

 

(映像:神奈川県立保健福祉大学 神奈川 横須賀)

神奈川県内の大学で福祉について学ぶ学生たちのゼミ.

「よろしくお願いします」「よろしくお願いします」

ここに月一回ゲストとして参加している渋谷治己さん(60)です.脳性マヒのため,生まれたときから思い通り体を動かすことができません.障害がある人とない人が〝互いを知る場〟を作りたいと四年前から自分の経験や思いを学生たちの話しています.

渋谷さん「僕たちを皆さんもそうだけれど,(障害のある人とない人が)日常的に出会えない関わり合えない社会のあり方があると思うのね.このあり方をそのままにして,〝あたたかい心〟〝思いやり〟と言うのはすごくむなしい」

 

(映像:買い物をする渋谷さん)

渋谷さんは作業所やグループホームを運営する理事長を務めています.自立して生活したいと十五年ほど前から実家を出て一人暮らし.スーパーや商店街にも良く出かけます.

渋谷さん「ミカンあります?」

店主「ミカンありますよ.350円です」

渋谷さん「じゃあ,それで」

店主「これ一つ.はい.小銭入れ,黒い方でしたっけ?」

渋谷さん「そうです」

店主「じゃあ,ここに入れときますね.はい.どうも有り難うね.寒いから気をつけて」

 

去年7月に起きた障害者施設での事件.「障害者がいなくなればいい」という容疑者の言葉に渋谷さんは衝撃を受けました.渋谷さん自身,暮らしの何気ない瞬間にまるで自分がいないかのように扱われていると感じることがあったからです.

渋谷さん「例えば,まちで配っているティッシュをもらおうとすると,何となく避けられちゃったり,家にいて営業の人が来るわけですよ.ピンポーンってなって『開いてますからどうぞ』と入ってもらうが,僕をみるとあわてて帰っちゃう.同じ空間にいても生活を共有できていない」

 

「無意識に障害者をいないものとして扱う事と障害者を否定し消し去ろうとする考えは,どこかで結びついているのではないか」そう感じたと言います.

渋谷さん「できれば障害はないほうがいいと思っているでしょうし.多くの人は.『元職員は差別的な人.自分はそうではない』果たしてそう言い切っていいのかな」

あのような事件を二度と起こさないためには,それぞれの心の奥底にある,『障害者はいない方がいい』という思いと向き合う必要がある.渋谷さんはそのことを学生にも伝えようとしていました.

 

(映像:神奈川県立保健福祉大学 神奈川 横須賀)

渋谷さんは子どもが生まれるときに持つ親の気持ちを例に話し始めました.

渋谷さん赤ちゃんが生まれたとき最初に切実に思うのは『五体満足であって欲しい』ということ.でも『五体満足であってほしい』ということは結局『障害をもって生まれて欲しくない』ということ.それは容疑者の考え方とどこかで結びついちゃう.ですよ」

 

学生A「私としては母親は子どもが健康に産まれてくる事を願う事だと思っていたから,そんなふうに全然考えた事がなくって」

 

渋谷さん「その母親の思い自体を責めるわけでは決してないのね.それは母親の素朴で本当に切実な愛情だと思う.そこは否定するつもりはない.だけど同時にやっぱり結びついていくのも事実よね」

 

そして最後にこうも言い添えました.

渋谷さん「毎日こんなこと考えていたらしんどくてしょうがないからね.『そういえば前にそんな事言っていた人がいた』という程度でいいので,時々ちらっと振り返ってくれたらなと思ったりしている」

 

学生C「正直,そういう見方もあるんだなと思った.けれどもストンと腑に落ちる感じではなくって,渋谷さんの言葉にはすごく驚きました」

学生D「多分自分も心のどこかで『障害者も何か出来る事がないと生きている意味がないのかな』と考える部分っていうのがあって.すごい感じました」

 

障害のある人もない人も一人の人間どうしありのままで向き合える日が来るように,渋谷さんはこれからも対話を続けていくつもりです.

渋谷さん「大勢の人たちを一度に変えていくことは難しいですけど,一人一人向き合って理解してくれる人,変わってくれる人を増やしていくのが,僕たちのやるべきことの一つの基本かなと思いますね.障害者と関わって欲しいし,付き合って欲しいなというふうに思うんですけどね

 

「自分の中に障害者を否定するような考えがないか?」と向き合うことは時に苦しいことかもしれません.渋谷さんは学生たちをはじめ,出会う人を信じているからこそ,そうした問いかけを投げかけていきたいとしています.

 

福祉よこはま 2007年3月発行143号から.前列中央が渋谷さん。

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