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「この事件は現代日本社会の投影であり,障害者問題の縮図」「これまで感じたことのない怖さ」「自分達(障害当事者)に刃先が向けられている感じ」「これでまた精神疾患者への偏見が増すのではないか」藤井克徳さん ''日本社会のあり方を根本から問い,犠牲者に報いるために''(1)  (生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの 大月書店)より

「2016年7月26日未明に,神奈川県相模原市の障害者入所施設「津久井やまゆり園」で起きた障害者殺傷事件は,国民全体に大きなショックを与えました」

「事件の基本的な性格は,『障害者の基本的人権生存権の否認』ということにあります」

「本書は,こうした問題意識(1〜8までが前の段落で整理されている)をもとに,日本国憲法と『障害者の権利条約』を鏡として,右記の問いかけへの回答を描き出そうとして編まれました」

これは,「生きたかった 相模原障害者殺傷事件が問いかけるもの(大月書店)2016年12月20日発行」にある,「はじめに—黙ってはいけない」で共同編集者のお一人池上洋通氏が書かれている言葉です.

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しばらくの間,この書籍に掲載された記事のいくつかを,ゆっくりでしかも部分的になってしまいますが,少しずつ紹介させて頂くことにします.多くの部分を割愛してしまいます.執筆者の真意が伝わらなくなる恐れが多分にありますが,その点はご容赦を.

 

1. 日本社会のあり方を根本から問い,犠牲者に報いるために. 藤井克徳 (1)

現代の日本社会を投影した事件

この事件が起きてからまもなく半年がたちますが,今なおこの国の最高責任者からは,事件に関して,被害者や国民に対するきちんとした見解や声明が出されていません.事件後初の国会となった第192回臨時国会での所信表明でも,一言もふれられませんでした.このように列島中に衝撃を与え,多くの障害当事者や家族を震撼(しんかん)させた事件ですから,こうした政府の姿勢は残念であり,問題があると思います.たしかに厚労省内に検証委員会が置かれましたが,報道や中間のまとめをみる範囲では,措置入院制度や施設の防犯策にのみ焦点があてられるなど,あまりに対症療法的です.

もう少し踏み込んで言うならば,この事件は現代日本社会の投影であり,障害者問題の縮図と位置づけていいのではないでしょうか.

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障害当事者の声

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事件直後から一ヶ月以内にあがったのは一様に「怖い」という声でした.メディアを通じて事件現場の生々しい報道がくりかえされたこともあるでしょうが,中でも一番怖いという声が多かったのは,元職員が容疑者だった事です.----これまで感じたことのない怖さだったに違いありません.

並んで多かったのは,容疑者が衆議院議長に出した手紙の中にある「重い障害のある人たちは死んだ方がいい,安楽死させるべきだ」という趣旨の文にみられる,優勢思想的な動機に対する怖さです.自分達に刃先が向けられている感じがするというのです.これは身体障害者精神障害者も含めての声でした.

そしてもうひとつ,精神障害者から異口同音に寄せられている声があります.それは容疑者に精神疾患があり措置入院の過去があったことで,これでまた精神疾患者への偏見が増すのではないか,時計の針が逆回転して,ふたたび入院中心の政策になるのではないか,という不安です.----