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マンリョウでもなくセンリョウでもなく別名は「10両」,でも明治時代には現在価格で1000万円の高値で取引!? ヤブコウジ=山橘 / 万葉集 このゆきの,けのこるときに,いざゆかな,やまたちばなの,みの てるも みむ 大友家持

 立冬(11月7日)は暦の上だけと思っていたら,今年はもう冬を感じさせる気候です.冬は花が少なくなりますが,今でも,そして,正月近くになるとより沢山,園芸ショップには.マンリョウ(万両),センリョウ(千両)が並びます.

 我が家の庭でもマンリョウは元気に育っています.しかも実生であちこちに.センリョウは最近,近くの神社では実をつけている(11月8日)のをみつけました.

でも,ヒャクリョウ(百両),と呼ばれる植物があることは知りませんでした.

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さらに,ジュウリョウ(十両)やイチリョウ(一両)までも!

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万両,千両にくらべると十両,一両は貧相にきこえてしまう.マンリョウ・センリョウほどショップで見かけないのはそのため?

ところが,十両と呼ばれるヤブコウジサクラソウ科,ヤブコウジ属)はとてつもない高額で取り引きされたことがあったそうです.

 ヤブコウジとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸  によれば,

「江戸時代、寛政年間に葉に斑が入るヤブコウジが好事家の間で人気を呼び、多くの品種がつくられました。その後、明治20年ごろから新潟県で再び流行し、明治27年には全国にブームが伝播.

投機の対象として、生産者や趣味家だけではなく一般市民も巻き込み、現在の価格で1000万円もの高値で取り引きされました

とのこと.

オランダのチューリップ投機の話は聞いたことがありました( チューリップバブルで検索すると沢山の記事が あります).日本ではヤブコウジだったんですね.オランダと言えばチューリップを連想するように,日本と言えばヤブコウジを連想してもおかしくない?

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そして,『万葉集』に山橘(ヤマタチバナ)の名で詠まれた植物がこのヤブコウジ

ということも初めて知りました.

古くから日本人に愛されてきた植物だったのですね.

 

山橘 / 万葉集

このゆきの,けのこるときに,いざゆかな,やまたちばなの,みの てるも みむ

この雪の,消のこる時に,いざ行かな,山橘の,実の 照るも見む 大友家持 (巻19-4226) 

この雪の,消(け)のこる時に,いざ行(ゆ)かな,山橘の,実の 照るも(照れる)見む

 

◎大友家持が,天平勝宝二年十二月雪の降った日にこの歌を作った.山橘は藪柑子(やぶこうじ)で赤い実がなるので赤玉ともいっている.

一首は

この大雪が少なくなった残雪の頃にみんなして行こう.そして山橘の実が真赤に成っているのを見よう

というので,雪の中に赤くなっている藪柑子の実に感興を催したものである.「いざ行かな」と促した語気に,皆と一緒に行こうという,気乗りのしたことがあらわれているし,「実の照るも見む」は美しい句で家持の感覚の鋭敏を示すものである.なお,家持には「消のこりの雪にあへ照る足引きの山橘をつとにつみ来(こ)な」(巻二十・四四七一)という歌もあって,山橘に興味を持っていることが分かる.この巻十九の歌の方が優っている.(斎藤茂吉 万葉秀歌)

 

◎この雪(ゆき)が消えてしまわないうちに,さあっ,行きましょう.山橘(やまたちばな)の実が照っているのを見ましょう.(楽しい万葉集 万葉集(4226): この雪の消残る時にいざ行かな 

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◎この雪が消え残っている中に,さあ出かけよう,そして,山の橘が輝いているのを眺めようじゃないか(折口信夫 口訳万葉集

註:折口氏は,山橘を「山の橘」と考えている可能性があります.

 

山橘 / 万葉集

けのこりの,ゆきに あへてる,あしひきの,やまたちばなを,つとに つみきな

消残りの雪にあへ照るあしひきの山橘をつとに摘み来な   大伴家持 (巻20-4471)

消(け)残りの、雪にあへ照る、あしひきの、山橘(やまたちばな)を、つとに摘み来な

 

◎消え残る雪に照り映えている山橘(やまたちばな)を、ちょっとしたプレゼントに摘んで来よう。

「つと」は、ちょっとした贈り物「みやげ」のことです。(楽しい万葉集 万葉集(4471): 消残りの雪にあへ照るあしひきの

 

◎消え残りの雪に,ちょうど叶(かの)うて,配合良く,赤く輝いている山の柑子(こうじ)を,(山へ入った人よ,)土産にもいで来てくれ

註:折口氏は,山橘を柑子(こうじ:小さなミカンまたはカラタチバナ),と考えている可能性があります.