古事記/植物

明月院から海蔵寺へ 本格的な黄葉/紅葉はもう少しの木が多かつた行程でしたが,色づいた木々を見ながら楽しく歩くことが出来ました.ハクサンボク,イチョウ,ナンキンハゼ,ツタ,ドウダンツツジ,ハゼノキ,カエデ.そしてケヤキ. とくと来て見てましものを山城の多賀(たか)の槻群(つきむら)散りにけるかも 高市黑人  うらさむき今朝の日和に風たちて欅の枯葉散り騒ぐなり 若山牧水

昨日は秋の深まり探りに明月院へ. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2023/11/22/235259 行きは北鎌倉まで横須賀線を利用しましたが,帰りは,浄智寺横を抜けて海蔵寺まで足を伸ばしました. 浄智寺山門です.中へ入っての参拝はしませんでした…

ブドウを詠んだ短歌2 今日の青果売り場にはピオーネが.売られている葡萄は欧州系と米国系を掛け合わせた栽培種ですが,日本の自生種にはヤマブドウとエビネが知られています.古名は葡萄葛. 乾葡萄(ほしぶどう)喉より舌へかみもどし父となりたしあるときふいに 寺山修司  ぶだう呑む口ひらくときこの家の過去世の人ら我をみつむる 高野公彦  季節にも貌(かほ)ある如くマスカット白桃を剝く掌(てのひら)の冷え 深井美奈子  甲斐が嶺は白き夏雲夏空のま底は熟るる葡萄の大地 馬場あき子

現在私たちが食べているブドウは,欧州系(Vitis vinifera ),アメリカ系(Vitis labrusca ),もしくはこの両者を交配させた栽培種ですが,古来から日本に自生していたブドウ属の種として,ヤマブドウとエビネが知られています. 「酸味と渋みが強く、生食…

ヒオウギとシャガ  シャガの名前の元となった漢字「射干」は,中国では和名のヒオウギ(檜扇)を意味する言葉.一方,「射干玉」は,「ぬばたま」と読み,ヒオウギの黒い実のことです.明治以降でも射干を「ひおうぎ」とルビした歌人もいます.:われを責むるごときしづかさ射干(ひあふぎ)の黒き珠美の熟れつつありて 清原令子  どちらを詠んだのか分からない歌も:射干(ひおうぎ)の花のふふまむ頃となり山ほととぎすいまだ聞こえず 斎藤茂吉

シャガとヒオウギ シャラノキ(沙羅樹 ナツツバキのこと) / サラソウジュ(沙羅双樹)同様, https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/11/234912 漢名と和名が入り交じって,混乱しかねない植物に,シャガとヒオウギがあります. シャガと聞…

elderberryとして広く知られているニワトコ.「ハリーポッター」にでてくる魔法の杖(「死の杖」「宿命の杖」)は,ニワトコでできている---- 別の見方をすれば,欧米でelder treeを知らない者はほとんどいないということ.日本では古事記,万葉集にニワトコの古名「やまたづ」が登場し,迎えの枕詞として使われます.万葉集では古事記の伝承をもとにした衣通王の詠んだ歌として紹介されています.ここで言う「古事記の伝承」は,兄妹の道ならぬ恋を描き,最終的には自死してしまう悲しい物語.

欧米では,elderberryとして広く知られているニワトコ. セイヨウカンボク - Wikipedia セイヨウニワトコの実はジャムやサプリメントとして利用されているようですが,最近では「Elder Wand ニワトコの杖」の名前がよく知られていますね. 世界中で大ヒット…

今日はクヌギの近縁,栗.古事記での記載のみを簡単に.「三栗」/万葉集と同じく,「中にかかる枕詞」として「三栗(みつぐり)」が二つの歌謡の歌詞に使われています.“三つ並ぶ栗の実の その中ほどあたりの枝の 色づいたつぼみのごと 美しく輝くおとめよ” 「栗の林」/まぐわうことも叶わぬでの,それを悲しんで歌を賜ったのじゃった.“引田の 若い栗の生えた林よ 若いうちに 連れ出し共寝すればよかったに”

植物を追って古事記を読み進め,このブログに載せてきました. 古事記/植物 (67) 昨日は,イノシシを追って,クヌギに行き着いてしまいました. 「臥猪の床」として平安時代以降,和歌などに取り上げられたイノシシ.“恐ろしき猪のししも、「ふす猪の床」と…

「臥猪の床」として平安時代以降,和歌などに取り上げられたイノシシ.“恐ろしき猪のししも、「ふす猪の床」と言へば、やさしくなりぬ。”(徒然草) しかし,古代においては,タンパク源であると同時に厄介で獰猛な獣としての位置づけでした.古事記では,クヌギに登って獲物を待っていたカゴサカ(応神天皇と異腹の御子)を食い殺す場面が描かれます.“そのクヌギの根元を掘って木を倒し,木の上にいたカゴサカを食い殺してしもうた”(三浦祐介訳 口語訳古事記)

江戸時代,絵画さらには花札に「臥猪の床」として描かれた猪. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/10/08/235311 有形文化財 – 近世絵画コレクション - 千總文化研究所 / Institute for Chiso Arts and Culture もともとは平安時代以降の和…

シャンシャンボ.漢名「南燭」 「日本のブルーベリー」あるいは「ワイルドブルーベリー」とも.植物分類では,節の段階で一般のブルーベリーとは分かれていますが,花はブルーベリー似.実は甘酸っぱくておいしいとのこと.古名「さしぶ」 つぎねふや やましろがはを かはのぼり わがのぼれば かはのへに おびだてる さしぶを さしぶの木(古事記) 

「日本のブルーベリー」あるいは「ワイルドブルーベリー」等と称して親しまれる木があることを知りました. シャンシャンボ.漢名「南燭」 関東地方には少ないせいあり(単に植物に疎いだけ?),見たことも,聞いたこともありませんでした. 「関西には普通…

古事記で描かれたヤマトタケルの物語では,野蒜のあと,さらに3種類の植物が登場します.いずれも歌に歌われる形で.「マツ」「シラカシ」「ヤマノイモ」です.「をはりに ただにむかへる をつのさきなる ひとつまつ(尾張の方(かた)に まっすぐに向きあう 尾津の崎なる 一つ松)」「くまがしが葉を うづにさせ その子(そのクマカシの葉を 髪飾りにせよ 倭へ向かう者たちよ)」「いながらに はひもとほろふ ところづら(その稲の茎に 絡まり這い廻る 山の芋の蔓よ)」

東征を終えたヤマトタケルは,足柄の坂の神を「ヒル(野びる)」の片割れで殺し,頂きから振り返ります. 「吾妻はや」---- 古事記 人代篇 其の三 (口語訳古事記 三浦祐介 文藝春秋) 足柄の坂本に到り,食(お)し物を口に運んでおった時に,その坂の神が…

「すぐさまその食い残しのヒルの片割れを,狙いすまして投げつけると,白い鹿の目にあたっての.鹿はころされてしもうた」匂いや味などに刺激のある植物は魔よけの力があると考えられていました.一方,匂いや味に刺激がある植物は,また滋養に富んだ野菜と考えられ,中国最古の医学書『黄帝内経』にある五菜の一つ薤は野蒜のこと.現代でも山菜愛好家に好まれるノビルですが,スイセンやタマスダレの誤食には注意.ノビル 野蒜2

植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜2 ノビル 野蒜1 https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2021/04/29/235542?_ga=2.29427007.1803228887.1618937900-847026506.1533741043 ノビル - Wikipedia 古事記 人代篇 其の三 (口語訳古事記 三浦祐介…

古事記には「ノビル」が2箇所に登場します. 「それで,すぐさまその食い残しのヒルの片割れを,狙いすまして投げつけると,白い鹿の目にあたっての.鹿はころされてしもうた」「いざ子ども のびるつみに ひるつみに わがゆく道の かぐわし はなたちばなは ほつえは とりゐがらし」植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜 

植物をたどって古事記を読む ノビル 野蒜 古事記には「ノビル」が2箇所に登場します. 初めの場面は,ヤマトタケルが東征から帰途につく途中,足柄の坂で,坂の神が姿を変えた白鹿に向けて投げつけた「食い残しの“ヒル” 」として. 2カ所目は,ホムダワケ…

古事記,万葉集の「ウリ」は,マクワウリのことでした.「まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく,クマソタケルの体をずたずたに切り刻んで殺してしもうたのじゃった」(古事記).「瓜食めば, 子ども思ほゆ,栗食めば,まして偲はゆ」(万葉集).そして,このマクワウリとシロウリ,さらにはメロンも同一の種. 「ウリ」(瓜)2

古代の「ウリ」は,マクワウリのことでした. ウリ(瓜)とは - コトバンク マクワウリ - Wikipedia 古事記では,ヤマトタケルの猛々しく荒々しい心が生んだ凄惨な殺害の様子が,「まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく」と表されています. http://yachiku…

その言葉を申し終えたかとみるとすぐ,ヲウス(ヤマトタケル)は,まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく,クマソタケルの体をずたずたに切り刻んで殺してしもうたのじゃった.(古事記) ウリは,古くは特にマクワウリのことで,日本には紀元前に渡来し,弥生時代前期の遺跡から種子が出土.青果売り場でマクワウリに取って代わって現在並んでいるのがメロンですが---- マクワウリもメロンの一変種です. 「うり」(瓜)1

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 「うり」(瓜)1 “三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記” 其の三 ヤマトタケルの戦いと—天翔ける英雄 その言葉を申し終えたかとみるとすぐ,ヲウス(ヤマトタケル)は,まるで良く熟れたウリを切り刻むがごとく,クマソタ…

「ひさご」(瓢.ヒョウタン)2 今日の「ひさご」は,器としてのヒョウタン(もしくはユウガオの実).ヒサゴが登場するのは,オキナガタラシヒメ(神功皇后)に依り憑いた神の言葉の中.「天つ神,国つ神と,山の神と,河や海のもろもろの神とに,ことごとく幣帛を捧げ祭り,わが御魂を船の上に置き祀りて,真木の灰をヒサゴの中に入れ,また,箸と平たい皿とを山のごと作り備え,それらを皆,大海に散らし浮かべながら渡り行くがよいぞ」 植物をたどって古事記を読む

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 「ひさご」(瓢.ヒョウタン)2 前回は,若いヤマトタケル(ヲウス)の髪型を表す「ヒサゴバナ」として登場する場面を取り上げました. yachikusakusaki.hatenablog.comこの時には,オホウス(ヤマトタケルの兄)は…

ひさご(瓢 ヒョウタン) “もう,この時には,オホウスはひとかどの男じゃったが,年の離れた弟のヲウスは,髪をヒサゴバナに結うての,ヤマトヲグナと呼ばれておったのじゃ” ヒサゴバナは,十四,五歳の少年の髪型のことで,ヒサゴの花のような形といわれ,若いヤマトタケル(ヲウス)の髪型でした. 「植物をたどって古事記を読む」

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 今日とりあげるのは,「ひさご」. 漢字では瓢.ヒョウタンを意味します. (瓠・匏もおなじく「ひさご」.どのように使い分けているのかよく分かりません) “三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋”によ…

橘2 “イクメイリビコの大君(第11代 垂仁天皇 すいにんてんのう)が永久の命を得ることができると,タヂマモリに探させたトキジクノカクの実がタチバナ(橘)”と古事記は記しています. トキジクノカクをようやく手に入れたタヂマモリが戻ってみると,派遣した天皇は亡くなっています.古事記では,タヂマモリが突然消滅してしまうという書き方で,“常世の国”という異界からこの世に戻ったタヂマモリは“時間の違いに曝されて,そうなるしかなかった”(三浦祐介)

古事記 橘2 “イクメイリビコの大君(第11代 垂仁天皇 すいにんてんのう)が永久の命を得ることができると,タヂマモリに探させたトキジクノカクの実がタチバナ(橘)” と古事記は記します. 樹木図鑑(タチバナ) この物語は,垂仁記の一番最後に付け足したよ…

橘 ① 生食されたミカンの古名.② ミカン科の常緑低木/日本で唯一の野生のミカン. 古来,橘の実体に混乱が:中国での「橘」は,おそらくダイダイの類.「古事記」非時香菓(ときじくのかくのみ) は現在のタチバナではなく,おそらくコウジミカンもしくはダイダイ. 古事記「橘」:大君は,ある時,三宅の連らが祖(おや),名はタヂマモリを常世(とこよ)の国に遣わして,トキジクノカクの木の実を探させたのじゃった. そのトキジクノカクの実というのはの,今のタチバナのことじゃ.

古事記 橘1 「橘 たちばな」と聞いて何を思い浮かべますか? 私の場合は,なぜか名字でした.何をした人かは全く忘れていましたが 「橘諸兄」. 普段全く考えたこともなかった名前! 「橘諸兄」ってどんな人? 調べてみると,奈良時代のかなりの重要人物.…

スゲ(菅)3  万葉集には菅とは別に山菅を詠んだ歌が14首あります.日本国語大辞典は,万葉集にある“山菅”は「山に生えているスゲの類」としていますが,漢名の麦門冬に当たる植物,すなわち,ヤブランまたはジャノヒゲとする説もあります. 山菅(やますげ/やますが) 万葉集 咲く花は,移ろふ時あり,あしひきの,山菅(やますが)の根し,長くはありけり  大伴家持 巻二十 4484

古事記では, イワレビコ(神武天皇)がイスケヨリヒメとの一夜の契りを懐かしんだ歌にも,管畳(すがだたみ)として詠われた菅(すげ/すが). http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/29/225404 あしはらの しげしきをやに すがたたみ いや…

スゲ(菅)2  古事記と同時代の万葉集では,菅は頻出しています.菅を詠む歌は45(49 / 44)首あって,万葉の草花としては6番目に多く詠まれている植物とされています.ただし,万葉集には山菅という植物が詠まれいて,これは湿地や池に生えるスゲとは別種の植物.そして,菅を詠んだ歌の中で「菅の根」とあるのは山菅とされるため,万葉の草花としての順位は9番目がより正確かもしれません. 大君の 御笠に縫へる 有馬菅 有りつつ見れど 事無き吾妹  作者不詳 万葉集巻十一 2767(2757)

「菅」は古事記で三カ所で記されています. その内の二カ所では,菅で作られた畳,管畳(すがだたみ)として描かれ,昨日とりあげたイワレビコ(神武天皇)がイスケヨリヒメとの一夜の契りを懐かしんだ歌はその内の一つ. あしはらの しげしきをやに すがた…

スゲ1 イスケヨリヒメを妻とした大君(イハレビコ 神武天皇). 一夜の契りを懐かしんだ歌の中に,「すがたたみ/管のたたみ」としてスゲが歌われます. 「 あしはらの しげしきをやに すがたたみ いやさや敷きて わがふたり寝し(葦茂る原の 荒れ果てた小屋で 菅のたたみを 清らかに敷き重ね わが二人でともに寝たおり)」 植物をたどって古事記を読む

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 前回とりあげたユリ(“山由理草” / 笹ゆり). http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/04/235703 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/11/05/231315 東征後のイハレビコ(神武天皇)は…

 後に,そのイスケヨリヒメは大君の住まう白檮原(かしはら)の宮に入ったのじゃが,その時,大君は歌を歌うての,その一夜の契りを懐かしんだ. 葦茂る原の 荒れ果てた小屋で 菅のたたみを 清らかに敷き重ね わが二人でともに寝たおり そうして,生まれた御子の名はヒコヤヰ,つぎにカムヤヰミミ,つぎにカムヌナカハミミ,この三柱じゃった. 「植物をたどって古事記を読む」シリーズ ユリ(“山由理草” / 笹ゆり)2

ユリ(“山由理草” / 笹ゆり)2 イハレビコが妻としたイスケヨリヒメは,ヤマユリ(“山由理草” / 笹ゆり)が多く咲く河のほとりに住んでいました. ササユリ - Wikipedia さて,そのイスケヨリヒメの家は,狭井(さい)河のほとりにあっての, 大君は,その…

ユリ(“山由理草” / 笹ゆり)  大君は,そのイスケヨリヒメの許(もと)に出かけていって,一夜の共寝(ともね)を楽しんだのじゃった.  そうじゃ,その河をサヰ河と言うわけはの,その河のほとりにヤマユリが多く咲いておったからじゃ.それでの,そのヤマユリの名を取ってサヰ河と名づけたのじゃ. 「植物をたどって古事記を読む」シリーズ

「植物をたどって古事記を読む」シリーズ 昨日とりあげた ニラ(からみ)とサンショウ(はじかみ) yachikusakusaki.hatenablog.com に続き,今日は-- ユリ 古事記では,“山由理草”の名で記されています.佐韋考−山由理草之本名をめぐって(三浦佑之) 是に…

あわふには からみひともと(アワ畑に生えた ニラがひと本),かきもとに うゑしはじかみ(垣根のわきに 植えたハジカミ)カムヤマトイハレビコ(神武天皇)が“東征”のおり歌った歌の一節.異境の地で敵を倒す際に歌われたもの. ニラは,畑に生えてきた雑草として根こそぎ刈ってしまう対象として. また,サンショウは口をひりひりさせる忘れられない辛さの象徴として歌われています. 「植物をたどって古事記を読む」シリーズ ニラ(からみ)とサンショウ(はじかみ)  

あわふには からみひともと そねがもと そねめつなぎて アワ畑に生えた ニラがひと本(もと) その根元から その根も芽も繫(つな)いで根こそぎに かきもとに うゑしはじかみ くちひひく われは忘れじ 垣根のわきに 植えたハジカミ 口がひりひり 忘れはしな…

古事記と同時代の万葉集にもカヤが詠まれています.ただし,すすき,尾花,み草,草と表記される場合がほとんど. 明らかにカヤの音で詠まれている歌はあまりみあたりません.岡に寄せ我が刈る萱のさね萱のまことなごやは寝ろとへなかも 万葉集巻14・3499  

カヤ 萱 3 “三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ 古事記では,トヨタマビメの出産の場面で登場する“カヤ(萱/茅)”. yachikusakusaki.hatenablog.com yachikusakusaki.hatenablog.com…

カヤは多くの場合「萱」と書かれますが,「茅」が用いられることもあります.しかし,どちらも,本来はカヤを意味していない漢字でした. 「茅」はチガヤ.「萱」は本来,ススキノキ科の植物カンゾウ,一名ワスレグサ.「カヤ」の意に用いるのは誤り.「萓」(カヤ「和名抄」「名義抄」)と字形が似ているところから,後世誤ったもの.  “植物をたどって古事記を読む”

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. カヤ 萱 2 古事記では,トヨタマビメの出産のための産屋をつくる場面で登場する萱. “海辺の渚に鵜の羽根を萱(かや)の替わりに屋根と壁とに…

カヤ / 萱 もともとは.“屋根を葺くのに用いるイネ科,カヤツリグサ科の大形草本の総称”.古事記はこのカヤが初めて記された書物.したがって,「総称」として用いられていることになります.“ワタツミの娘のトヨタマビメがひとりでホヲリのもとにやってきての,「わたしは,すでに身ごもっておりましたが,今まさに,子が生まれる時になりました」「そこですぐさま,海辺の渚に鵜の羽根を萱(かや)の替わりに屋根と壁とに葺いて,産屋(うぶや)をつくったのじゃ」 “植物をたどって古事記を読む”

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. 今日とりあげるのは カヤ 萱 日本国語大辞典によれば,カヤはススキの意味で用いられることもあるものの,もともとは.“屋根を葺くのに用いる…

カツラ/古事記3 神の依りつく木カツラ.たたらの神・金屋古(かなやご)神の御神木としても崇められ,たたらが盛んであった地方には大木が残されています.名称の混乱(桂は中国ではモクセイ/ニッケイ)の原因となったカツラの香は,葉に含まれるマルトール.ショウユノキ,コウノキの別称もあるそうです.そして,老木は大木に. 巨樹ランキング・トップ20に,2カ所のカツラがランクイン.

カツラは神の依りつく木; 古事記では--- アマテラスの使者のキジのナキメが止まり, 釣り針を探してワタツミの宮へ行ったホヲリ(ヤマサチビコ)が登ってトヨタマビメを待っていました. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/01/24/222554 ht…

カツラ /古事記2 古事記のカツラはモクセイであるとする説があります.中国ではモクセイ(桂花)やニッケイ(肉桂)を表すときに用いられる「桂」を,“万葉の時代から平安時代にはカツラとあて違え”ていました.しかし,モクセイが日本に渡来したのは15世紀ごろ(湯浅浩史).そうだとすれば,古事記の香木/楓は現在のカツラと考えて間違いないと言ってよいでしょう.また,かつらは,中国伝説で,月の世界に生えているという木.黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく見れば /万葉集

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. 古事記では,二つの場面で登場するカツラ. http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/01/24/222554 1. アマテラスが「この葦原の中…

カツラ / 古事記1 愛らしいハートの形の葉で知られ,秋の紅葉も美しいカツラ.古事記では二つの場面で登場します.一つは,ウミサチビコ.ヤマサチビコの物語.「泉のほとりに大きなカツラの木が立っておろうから,その木の上に登って座っておるとの,ワタツミの娘がそなたを見つけて---」「ナキメは天より中つ国に降り到り,アメノワカヒコの家の門に植えられた大きなカツラの木の上に止まり」カツラは神聖な神の依りつく木とされていました.“植物をたどって古事記を読む” 

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. 今日とりあげるのは カツラ 愛らしいハートの形の葉で知られ,秋の紅葉も美しい. カツラとは - 育て方図鑑 | みんなの趣味の園芸 NHK出版 【…

タケ/古事記2 ホヲリ(ヤマサチビコ)に与えられた「タケを隙間なく編んだ小さな籠の船」は,ワタツミの宮へ,なくしてしまった兄ウミサチビコの釣り針を探しに行くためのものでした.三浦氏「目のない(マナシ=目なし)竹籠であり,海中に潜ることのできる潜水艦のような船をイメージしているのだろう」 .ワタツミへ向かったホヲリは,三年(みとせ)もの間その国に住みついて,トヨタマビメとともに暮らします.三浦氏曰わく「けっこういい加減な男である」.“植物をたどって古事記を読む”

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. 竹2 (竹1 http://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2020/01/22/231333 ) ホヲリ(ヤマサチビコ)に与えられた「タケを隙間なく編んだ…

タケ  古事記には,タケは幾度となく登場するようです. 三浦祐介訳 口語訳古事記の索引によれば,5カ所.初めて登場するのは,ホヲリ(アマツヒコヒコホホデミ・ヤマサチビコ)が兄ウミサチビコの釣り針をなくし,探している場面.シホツチは,すぐさま隙間なく竹を編んだ小さな籠の船を造っての,その船にホヲリを乗せて,教えて言うたのじゃ.“植物をたどって古事記を読む”

“三浦祐介訳・注釈 口語訳古事記[完全版]文藝春秋” をテキストとした “植物をたどって古事記を読む”シリーズ. 今日とりあげるのは タケ 古事記には,タケは幾度となく登場するようです. 上記口語訳古事記の索引によれば,5カ所. ほかに,タケノコ=タ…