写すだけ万葉集

十二月・師走・極月を詠んだ短歌  陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています.極月とも.  牕(まど)の外は 師走八日の朝の霜.この夜のねぶり 難かりしかも 釈迢空  綿菓子のはかなき嵩(かさ)をあきなふや師走の空の無限に碧し 馬場あき子  極月の水にしづめる青砥石引上げて砥ぐ霜の柳刃 馬場あき子  恋をすることまさびしき十二月ジングルベルの届かぬ心 俵万智

12月に入って,一週間. わが家の冬の定番ビオラの苗を植えて二週間.大分育ってきています. 陰暦12月の呼称/異称は、誰もが知る「師走」.陽暦でも借用されています. 語源としては「師(僧)が忙しく走り回る月」説が広まっていますが,「為果つ月(一年の…

けやき(つき)・けやきの落葉を詠んだ歌  古事記の歌謡にも詠われ,神聖視されてきたケヤキ.江戸幕府が植栽を奨励したため,特に関東地方に多く見られます.古名は槻. とく来ても見てましものを山背(やましろ)の高(たか)の槻群(つきむら) 散りにけるかも 高市連黒人  うらさむき今朝の日和に風たちて欅の枯葉散り騒ぐなり 若山牧水  

最もよく見かける落葉樹の1つ,ケヤキ. 特に関東地方に多いように思いますが,これは,江戸時代に幕府が奨励したためとのこと. (関東近郊に立派なケヤキが多いのは、徳川幕府がその植栽を奨励したことにちなむ。江戸時代には橋げたや船、海苔を養殖する…

木の葉散る・落葉を詠った歌  英勝寺までの散歩の道すがら,沢山の落葉に出会いました.多くが色あせた中に鮮やかな葉も.「こゝかしこ さだめなく とび散らふ 落葉」の季節   石にまどひ木の根にまどひ落葉らはおのがまにまにたむろせるみゆ 伊藤左千夫  風いでて落葉しきりに降る音す酔へどもさびし肘曲げて寝む 吉井勇  たどきなく耳を澄ませば身もだえて落葉を急ぐ木々と思ほゆ 大西民子 

黄葉の季節は,また,落葉の季節でもあります. 昼前に英勝寺まで散歩した際の画像です.多くは色あせた姿ですが,鮮やかな色彩を保った葉も混ざってきます. 「落葉」という言葉は,古事記でも使われている語ですが,万葉集には詠まれず,平安時代の短歌に…

桂 / 桂を詠んだ歌  古事記ではヤマサチビコが登り,万葉集では月の中の木として詠われました.ハート型のかわいらしい葉は,秋には見事に黄葉し,その時期に高まる芳香で人々を和ませます.  川添の木むらの桂黄葉せり添水(そうず)をおとせ小屋の戸口に 岡麓   真野の宮 砌(みぎり)におつる秋の葉の桂のもみぢ すでに 色濃き 釈迢空

歌人たちは,古来より,カエデやイチョウ以外の紅葉/黃葉も歌に詠んできました.そのような歌を取り上げています. 今日は「桂」.詠まれた歌はあまり多くないようですが.かわいらしい葉は大好きです. https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/122539 古…

様々な楓の種 & 紅葉(もみじ/こうよう)を詠った短歌[1]  日本で最もよく見るカエデ属の植物は,イロハモミジ(いろは紅葉,伊呂波紅葉、学名:Acer palmatum).葉の切れ込みが鋭いのが特徴で,園芸品種も多数あります.ヤマモミジ,オオモミジは変種とされるようになっています.  秋山の黄葉を茂み迷はせる妹を求めむ山道知らずも 柿本人麻呂  経(たて)もなく緯(ぬき)も定めずをとめらが織れる黄葉(もみぢ)に霜な降りそね 大津皇子  見る人もなくて散りぬる奥山のもみぢは夜の錦なりけり 紀貫之  

秋の紅葉を代表する樹木,カエデ/カエデ属にはおよそ160種あるとされています(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Acer_species). 一方,日本は,楓を代表とする秋の紅葉をとりわけ好む国民といえ,数多くの短歌の歌題とされてきました. 今日・明日…

鎌倉円覚寺の山門前・駐車場のカエデは,かなりきれいに紅葉している株がいくつかありました.カエデは漢字では「楓」,一般的には「もみじ」と呼ばれる事が多いかと思いますが,漢字「楓」,呼び方「もみじ」には,歴史的にややこしいことがいくつかありますので,整理してみました. 我が宿にもみつ蝦手(かへるで)見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし 田村大嬢  月に見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ 湯原王

イチョウと並んで,紅葉(黃葉)する樹木の代表と言えば,カエデ(楓)ですね. 北鎌倉円覚寺まで,楓の紅葉探索に行ってきました.昨日のことです. 見頃は11月下旬から12月初旬ですが,きれいに紅葉している株にも出会うことができました.特に山門の外と…

昨日と同じ散歩コース:源氏山〜海蔵寺の樹木の写真をお届けします.木の実を見つけられなかった樹ですが,木の実の画像はネット上からお借りします. エノキ,オニグルミ,サカキ,タブノキ,ネムノキ,クヌギ,カツラ,モミジ.  吾が門(かと)の榎の実もり喫(は)む百(もも)千鳥千鳥は来れど君ぞ来まさぬ  子持山若かへるでのもみつ まで寝もと我(わ)は思ふ汝(な)はあどか思ふ 東歌 万葉集  

昨日は,鎌倉源氏山の木の実/草の実の画像をお届けしました. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/ 今日は,同じ散歩コースの樹木の画像を集めてみました. 全て実をつける木ですが,その実を見つけられなかった木と言い換えても良いかと思います.そこ…

身近な秋の実1  秋はドングリ以外にも多くの木の実がみのる季節.この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します.チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で.マンリョウ,センリョウ,サンザシが真っ赤になるまでにはまだ時間がかかりそうです.一方,妙法寺で出会ったサネカズラの実は,この時期でも一部は赤く鮮やか.美しい実です. 名にし負(お)はば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら人に知られで くるよしもがな 三条右大臣

秋は木の実の季節でもありますね.昨日は取り上げた安国論時には,ドングリが沢山落ちていました. 今日は,この二三日の間に出会った木の実の画像を紹介します. チャノキは妙法寺.アオキは八雲神社の裏山で. この時期の木の実はまだ青いものばかり. お…

ナデシコを詠んだ歌(1)  万葉時代のナデシコは「瞿麥(クバク)」等で表記されます.「なでしこ」が「撫子」と表記されるようになるのは,平安時代になってから.女性に例えられることが多いナデシコですが,万葉集では男性に例えた歌もあります.   なでしこが花見るごとに娘子(をとめ)らが笑(ゑ)まひのにほひ思ほゆるかも 大伴家持  朝ごとに我が見る宿のなでしこの花にも君はありこせぬかも 笠郎女  うら恋し我が背の君はなでしこが花にもがもな朝な朝な見む 大伴池主

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 今日は最後に残ったナデシコ. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)花 山上憶良 万葉集 巻八 一五三八 芽之…

葛(くず)を詠んだ歌(1) 基本的に葛は山で自生する植物.花はかわいらしいとは思いますが---特に愛でる対象ではないようにも思います.実際,枕草子では,「草の花は(64段)」ではなく,「草は(36)」で取り上げられています. 夏葛(なつくず)の絶えぬ使のよどめれば事しもあるごと思ひつるかも 大伴坂上郎女  真葛原(まくずはら)靡(なび)く秋風吹くごとに阿太(あだ)の大野の萩(はぎ)の花散る 作者不詳

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)花 山上憶良 万葉集 巻八 一五…

朝皃 / キキョウ 桔梗を詠んだ歌(1) 山上憶良の「朝皃之花」は「桔梗」とするのが一般的.桔梗以外の候補は,木槿,朝顔(現在の).牧野富太郎博士はこれらの候補を否定し, 新撰字鏡で桔梗のふりがなに「阿佐加保」があることから,「朝皃=桔梗」説を後押ししました.枕草子には桔梗と朝顔が併記されているのですが---  臥(こ)いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝貌の花 作者不詳  我が目妻(めづま)人は放(さ)くれど朝貌の年さへこごと我は離(さか)るがへ  東歌

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 紹介というのはおこがましく,いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)…

オミナエシを詠んだ歌(1) オミナエシの「おみな」は「をみな」で,「おんな」の古語! 万葉集では,「姫部志」など,美しい女を表す字があてられています.スイカズラ科オミナエシ属に分類され,オトコエシの「米花」に対し.「栗花」と呼ばれることも. をみなへし 秋萩折れれ 玉桙(たまほこ)の 道行きづとと 乞はむ子がため   石川老夫  高圓(たかまと)の 宮の裾廻(すそみ)の 野づかさに 今咲けるらむ をみなへしはも 大伴家持 

「秋の七草」を詠んだ歌を改めて紹介しようというシリーズ: 紹介というのはおこがましく,いつもの通り「写すだけ」ですが----. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)…

ススキ(すすき/薄/芒)を詠んだ短歌1  万葉集で,ススキは詠んだ歌は三六(古今短歌歳時記)とも,四一(楽しい万葉集),四六(ニッポニカ)とも言われています. 数え方によって大きく異なるのは,「かや」を詠んだ歌をススキを詠んだ歌とするかどうか,さらには,「かや」に「草」をいれるかどうかによるようです. 秋の野のみ草刈り葺き宿れりし宇治の都の仮廬(かりほ)し思ほゆ 額田女王  めずらしき君が家なる花薄穂に出づる秋の過ぐらく惜しも 石川広成 

鎌倉・栄福寺跡の公園のススキの穂は,花が開ききって,秋を実感させてくれました. 栄福寺:鎌倉市/史跡永福寺跡 源頼朝が建立した寺院.源義経,藤原泰衡など,頼朝の奥州攻めで亡くなった武将たちの鎮魂のため,平泉の中尊寺二階大堂等を模して建立され…

藤袴  七草の一つフジバカマの話題をいくつか.1. わが家の藤袴は園芸種の白花ですが,一般的には赤みが混ざった花を咲かせます.園芸店で売られているものの多くはサワヒヨドリとの交配種が多いそうです. 2.フジバカマの学名は,二つあります.3. 「藤袴」の異名「蘭(らに)」  萩の花 尾花葛花(くずはな) 瞿麦の花 女郎花 また藤袴朝顔の花 山上憶良  宿りせし人の形見か藤袴忘られがたき香ににほひつつ 紀貫之   蝶二つ激しく翅を開閉す「万葉の園」ふじばかまの花 日野裕子 

秋の七草の一つフジバカマの話題をいくつか. 萩の花 尾花(をばな) 葛花(くずはな) 瞿麦(なでしこ)の(が)花 女郎花(をみなへし) また藤袴(ふぢはかま) 朝顔の(が)花 山上憶良 万葉集 巻八 一五三八 1. 様々なフジバカマ? わが家のフジバカマが開花…

萩は,日本人に長く愛されてきた花で,和の花と言って良いでしょう.万葉集で最も多く詠われた植物であることはよく知られています.枕草子でも絶賛されました.  我が宿(やど)の 一群(ひとむら)萩を 思ふ子に 見せずほとほと 散らしつるかも 大伴家持  真葛原 靡く(なびく)秋風 吹く毎に 阿太(阿陀)の大野の 萩が花散る 作者不詳 万葉集

海蔵寺に萩を見に行ってきました. 多く植えられているわけではありませんが,山門手前の階段の両脇にきれいに植えられていて,見応えがあります. 手前が赤花,門のすぐ横が白花. 遠景では赤花が目立ちますが,白萩に囲まれた山門はなかなかのものです. …

ヒユ科の植物たち(1) 雑草の合間に咲くハゲイトウに出逢いました.最近の品種は,小さいながら美しく咲いてくれます.万葉集に「韓藍(からあい)」として詠われ,古くは食用もしくは染料として使われていたとか.近縁のアマランサス属は種子も葉・茎も食べられているので食用説もうなずけます.恋(こ)ふる日の日(け)長くしあれば我が園の韓藍(からあゐ)の花の色に出でにけり 万葉集

鎌倉瑞泉寺の山門近くで,ケイトウに出逢いました.小さいながら,雑草に覆われた一角で,鮮やかな赤が目立っていました. ヒユ科の植物たち(1) ケイトウ ケイトウの以前の品種は「鶏頭」という名前が似合う姿でしたが--- ケイトウ 植物 - Google 検索 最…

ソクズは レンプクソウ科 ,ニワトコ属 .ニワトコは,漢字で接骨木.接骨木は生薬名にもなっていて,その時は「セッコクボク」と読むようです.茎は打撲傷やうち身に,花や葉は利尿.セイヨウニワトコ,アメリカニワトコは,熟して黒くなった実を食用に.ニワトコは,古事記・万葉集では「やまたづ」と呼ばれていました. 君が行き日(け)長くなりぬやまたづの迎へを行(ゆ)かむ待つには待たじ 軽太郎女

昨日見かけたソクズ(蒴藋).小さな花が集まっていて,よく見るとなかなか美しい花.実もなかなかかわいらしい. https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/08/12/235533 レンプクソウ科 Adoxacea,ニワトコ属 Sambucusの植物で,別名クサニワト…

暑い1日.8月に入ったという実感があります.8月は,別名葉月.新緑/紅葉の月でもないのに--- と奇妙に思ったことがありますが---.新暦・旧暦の違いを知ればよいことでした.そして「木々の葉落ち月(はおちづき)」というのが有力な説だそうです.各月の異名(和風月名)の由来候補を,国立国会図書館のサイト+日本国語大辞典から抜き書きしておきます. そして,今日,新型コロナによる新規死亡者7日間平均で,第三波のピークを越えました.世界第6位です.「西欧なみ」になりました.

とてつもなく暑い1日でした.明日はもっと暑くなるとの予想. 8月に入ったという実感があります. 8月は,別名葉月. (睦月如月----等の昔の月も呼び方には「和風月名」という言葉もあるようですが,一般的かどうか? 辞書には載っていません.例えば「…

センダン(栴檀) 日朝様(鎌倉本覚寺)に,センダン(栴檀)のかなり大きな木があります.葉が美しいと眺めていますが,今の季節は青い実をつけています.栴檀の花は清少納言も「いとをかし」とし,楝(あふち/おうち:センダンの古名)色という色前としても残っています.中国語(漢字本来の意味)では,楝がセンダンを表し,栴檀はビャクシンの意味.  妹(いも)が見し 楝(あふち)の花は 散りぬべし 我が泣く涙 いまだ干(ひ)なくにも  山上憶良

いつもの散歩コースでよく通る日朝様(鎌倉本覚寺)に,センダン(栴檀)のかなり大きな木があります. 葉がとても美しいと思って眺めていますが,今の季節は青い実をつけています. この栴檀. 花が,奈良・平安の時代から「楝」あふち / おうち(古名)の…

万葉集のユリを詠んだ歌12種の多くはササユリを,東国の歌ではヤマユリを詠んでいると考えられています.平安〜江戸時代の歌題としてはあまり取り上げられず,近・現代に再び多くうたわれるようになりました. ゆあみする泉の底の小百合花二十の夏をうつくしと見ぬ 与謝野晶子  髪ながき少女(おとめ)とうまれしろ百合に額(ぬか)は伏せつつ君をこそ思へ 山川登美子  さびしさよ甕(かめ)に盛られし百合の向ふに人垣の向ふに君がゐるなり 河野裕子

15種の自生種,8種の固有種がある日本は,「ユリの王国」とも言える国. 第3回 日本はユリの王国 | BloomField - ガーデニングABC - ユリと日本 | ユリ.net https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2017/06/28/012534 yachikusakusaki.hatenablog.co…

ハマユウ1  鎌倉おんめ様(大巧寺)の小径に,ハマユウ(浜木綿)が咲いていました. 少し花が痛んではいましたが,他にはない花姿は印象的.古代から日本人の目を惹いてきた植物ですが,柿本人麻呂,清少納言は花より葉に注目していたようです.厚い根性葉が幾重にも茎を抱き,見るからに力に満ちているたくましい植物ですが,花は柔らかく優しい感じがします(山田卓三) み熊野の 浦の浜木綿百重(ももへ)なす心は思へどただに逢はぬかも 柿本人麻呂

鎌倉おんめ様(大巧寺)の小径に,ハマユウ(浜木綿)が咲いていました. 少し花が痛んではいましたが,他にはない花姿は印象的. 万葉集,枕草子にも取りあげられ,古代から目を惹いてきた(湯浅浩史)植物. 柿本人麻呂,清少納言は,花よりむしろハマユウ…

ホンカンゾウ(本萱草) 門前に植えられているところを通りかかりました.鮮やかな花です.ノカンゾウ,ヤブカンゾウとともに「わすれぐさ」として知られる植物.中国では「食するとうれいを忘れるという」(字源).山菜のノカンゾウ.もっと人気が出てもよさそうですね. それとなく紅き花みな友にゆづりそむきて泣きて忘れ草つむ 山川登美子

散歩の途中,一軒のお宅の門の横に植えられた花.一輪は既に萎れていましたが,もう一輪はまだ元気に鮮やかな色彩を保っていました. PictureThisの判定は,ホンカンゾウ(本萱草). ノカンゾウの栽培種ですね. ノカンゾウ,ヤブカンゾウ,そしてこのホン…

ヒオウギとシャガ  シャガの名前の元となった漢字「射干」は,中国では和名のヒオウギ(檜扇)を意味する言葉.一方,「射干玉」は,「ぬばたま」と読み,ヒオウギの黒い実のことです.明治以降でも射干を「ひおうぎ」とルビした歌人もいます.:われを責むるごときしづかさ射干(ひあふぎ)の黒き珠美の熟れつつありて 清原令子  どちらを詠んだのか分からない歌も:射干(ひおうぎ)の花のふふまむ頃となり山ほととぎすいまだ聞こえず 斎藤茂吉

シャガとヒオウギ シャラノキ(沙羅樹 ナツツバキのこと) / サラソウジュ(沙羅双樹)同様, https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/11/234912 漢名と和名が入り交じって,混乱しかねない植物に,シャガとヒオウギがあります. シャガと聞…

ハス(蓮)1  鎌倉八幡宮のハスの花も咲き始めています.以前も取り上げた蓮について改めて整理します.「はす」は「蜂巣」の略名.英語ではlotusですが,「lotus=はす」ではありません.スイレンと似ているため以前は同じ科に分類されていましたが,系統樹上かなり離れた植物(ヤマモガシ目ハス科)とされています.万葉集では葉にたまった露の美しさが詠われています. ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似たる見む  作者不詳

鎌倉八幡宮のハスの花も咲き始めています. (といっても,夕方に見たので開花はしていませんでしたが) https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/07/01/235700 平家池のハス 源氏池のハス 蓮については,このブログでも何回か取り上げてきました…

合歓(ねむ)を詠った短歌1 紀郎女と大伴家持の相聞歌がよく知られています.「昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴(わけ)さへに見よ 紀女郎」ねぶの花と茅花を摘み,歌を添えて大伴家持に贈った歌.ネムノキは小葉が夜合わさって閉じることから,中国では合歓木と言われています.この性状を知った上での歌のやりとりです.歌の意は「此(この)合歓の花は、晝(ひる)は咲いて、夜は焦れて寝る花です。あなた許りが焦れて寝なさる訣(わけ?)ではありません。わたしまでも、矢張焦れてゐます」

合歓(ねむ)を詠んだ芭蕉の句が余りにも有名ですが--- https://yachikusakusaki.hatenablog.com/entry/2022/06/29/000708 合歓は,万葉集にも取り上げられている花で, (万葉集では「ねぶ」と呼ばれます) 紀郎女(きのいらつめ)と大伴家持の相聞歌がよく…

秋の花とされるツユクサ(露草)ですが--- ツユクサを詠んだ短歌について,古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)から.万葉集では,つきくさ/月草として登場.露草と呼ばれるようになつたのは平安時代ですが,近世はもとより近代においても「月草/鴨頭草」と詠まれることが圧倒的に多かったとのこと.月草のあはれ仮りなる命もてぬれてののちの人に恋ひつつ 藤原為家  をさなきを二人つれ立ち月草の磯辺をくれば雲夕焼けす 伊藤左千夫  今朝ほどはわが道の辺に霧濡れてはなださびしきつゆくさの花 高橋幸子

秋の花とされるツユクサ(露草)ですが--- わが家では早くも咲いていること,そして,昨日の流れから,今日はツユクサを詠んだ短歌について,簡単にまとめてみます. といっても,例によって,古今短歌歳時記(鳥居正博 教育社)の抜粋になります. 万葉集で…

ノハカタカラクサとツユクサ  昨日,安国論寺でノハカタカラクサ(野博多唐草)に出会いました.今までは全く知らなかった花でしたが,今ではどこにでも生育しているようですね.ツユクサ科の外来植物で,ツユクサとは属が異なります.ツユクサもノハカタカラクサも繁殖力が強く,世界中に広がっているようです.月草の うつろひやすく 思へかも 我が思ふ人の 言(こと)も告げ来ぬ 大伴坂上家之大娘 

昨日,安国論寺で出会った花をブログの終わりに載せさせてもらいましたが,その中の一種は,ノハカタカラクサ(野博多唐草). 今までは全く知らなかった花でしたが,今ではどこにでも生育しているようですね. 亀ヶ谷の切通でも群生しているのを見かけまし…

紫陽花を詠んだ歌  万葉集に既に歌に詠まれていたことはよく知られています.しかし,古歌には余り詠まれず,その傾向は近世まで続きます.よく取り上げられるようになつたのは近代になつてから. あじさいの八重咲く如く弥(や)つ代にいませわが背子見つつ偲はぬ  橘諸兄   まかがよふ光りのなかに紫陽花の玉のむらさきひややかに澄む 太田水穂   紫陽花のふふむ雨滴を揺りこぼす言はば言葉がすべてとならむ 河野裕子

日本で古来より生育し,また栽培されてきた紫陽花. アジサイの語源は,特定はできていませんが--- 「あじ(あぢ)」は「あつ」で集まること,「さい」は真藍(さあい)の約で青い花がかたまって咲く様子から名付けられたと思われる.(日本国語大辞典) と…

初夏の花ウツギ / 卯の花を詠んだ歌   万葉の時代から明治期に至るまで,日本の初夏の花の代表はウツギの花=卯の花だったようです.万葉集に二四も詠まれ,唱歌「夏は来ぬ」は明治から現代まで歌い継がれています.「ウツギの花が春から初夏への季節の変わり目に咲き、また白く目だつことから、暦の普及していなかったころに季節を知る重要な花であった」 五月雨もむかしに遠き山の庵通夜する人に卯の花生けぬ 与謝野晶子

初夏・五月 アジサイには早いものの,沢山の種類の花に出会うことができます. あくまでも私のイメージですが,サツキ,アヤメが古くから親しまれてきた典型的な5月の花.フジ,ハナミズキは桜が終わった4月の花ではないでしょうか. バラ園のバラも5月が見…

かきつばた(杜若・燕子花)1  実は,まだ間近にカキツバタを見たことがありません.今年こそはどこかで--とは思つていますが.「アヤメ属のなかではもっとも古くから栽培された」「日本原産」とされるカキツバタ.アヤメ(花あやめ)と異なつて,万葉集,古今集でも詠われています.杜若衣(きぬ)に摺りつけますらをの着そひ猟(かり)する月はきにけり 大伴家持  か: からころも き: 着つつなれにし つ: つましあれば は: はるばる来ぬる た: たびをしぞ思う 在原業平 

5月はアヤメ,カキツバタの季節.といっても,カキツバタを近くで見たことのない私. Iris laevigata - Wikipedia ハナショウブを中心とした菖蒲園で見ることができるのでしょうか?多くは,より華やかなハナショウブ中心のようにも思いますが--- 実はまだ菖…